ヘアドネーションの裏側にある、それぞれのドラマ | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]
「31cm」とは、お気付きの人もいるかと思うが、ドネーションできる最低限必要な髪の長さだ。伸ばすのに2、3年はかかる。それでもできるウィッグのスタイルはショートなので、セミロング以上のものを作るためには更に長い髪の毛が必要だ。他には、カラーやパーマなど何も施していないことが条件だと私は勘違いをしていた。この本の出版元の方に「白髪でも何でも大丈夫なんです」と教えていただいた時、まだまだ私のように正しく知らない人が多いのではないだろうかと思った。 何年も前になるが、友人が病気になった時にウィッグを購入しに行くのに付き合ったことがある。人工毛や人毛、長さやスタイルも様々で、値段も高かったことを思い出した。成長が著しい子どもだと買い替えが必要になり、経済的にも負担が大きくなってしまうという理由などで、この本を監修されたNPO法人JHD&C(ジャーダック)は、18歳以下の必要とする子どもたちにウィッグを無償提供する活動を行っている。 『31cm~ヘアドネーションの今を伝え、未来につなぐ~』NPO法人JHD&C 監修 KuLaScip 2,200円(税込み) 提供する人(ドナー)、受け取る人(レシピエント)がいて、両者を橋渡しする団体がある。また、提供する人の髪の毛を切ったり、受け取った人のウィッグを整えたりする美容師さんも。ヘアドネーション独特の技術と心(マインド)を体得している美容師さんはまだまだ数が少ないのだと、ジャーダック代表の渡辺貴一さんはおっしゃっていた。 普段、私たちが美容院に行き少し違った感じにしてみようと「イメチェン」を試みたり、「いつものように」してもらったりする時も、美容師さんへの信頼は大切だ。パーマやカラーは自分の髪質を理解してくれているからこそ安心してお願いできる。 何年も体の一部であった髪の毛を切り離す行為や、これから自分の一部になろうというヘアスタイルを整えてもらうというのは、大イベントに違いない。その大イベントに一緒に立ち会うということは、髪の毛だけでなく思いも一緒に理解をして受けとめ、かつ特別な技術が必要なのだ。 もっと変われば、もっと生きやすく ウィッグを必要とする子どもたちは何がしかの病気を抱えており、そこには寄り添う医療関係者がおられる。必要としている子どもたちにはまだまだ全然届いていないという現実があり、小児がんの現場においては提供数が1%にも満たないという。現時点で申請から1、2年かかるというウィッグは、突然やってくる症状に間に合わないのだ。 病気をした経験や障がいを抱えながらも、自らできることがあればと提供者(ドナー)になる人、ウィッグを着けるようになったことで、自分よりも両親が安心してよかったという受け取った人(レシピエント)など、ヘアドネーションに携わる様々な当事者の声がつづられている。この本を店頭で展開するにあたり、最初は「未来に向かって社会貢献する!」というようなイメージを思い浮かべたのだが、当事者全てのページを読み終えると、それではあまりに陳腐すぎた。何をテーマにして良いか正直分からなくなり、ずっと答えは出ていない。 携わる当事者の言葉、1ページ1ページ全てがテーマなのだと今は思う。もしかしたらウィッグは必要でないのかもしれないという意味も込めて、より多くの人に知っていただければと思う。そして、ヘアドネーションを一躍広められた柴咲コウさんが本の中でも書いておられる「もっと周りの大人たちの認識が変われば、子どもたちももっと生きやすくなるのでは」(p.111)という言葉のように、できることをまずは自分から、と思うのだ。 関連記事