政府・都のコロ

政府・都のコロナ楽観発言 医療関係者ら危機感「先が見えない」
新型コロナウイルスの感染者急増を巡り政府や東京都が発するメッセージについて、医療関係者らから疑問の声が上がっている。重症化リスクの高い高齢者の感染が減っていることなどを念頭に、現状を楽観しているととられかねない発言が相次いでいるからだ。最前線でコロナ対応にあたる都内の保健所の関係者らは「今週になり、夜中まで入院調整ができない事例も出ている」と危機感を強めている。
菅義偉首相は都内の新規感染者数が過去最多を更新した27日に記者団の取材に応じた。その際、「不要不急の外出を避け、オリンピックはテレビで観戦してほしい」と呼び掛けたが、大会中止の可能性を問われると「人流(人出)も減っている。そこはありません」と否定した。また、東京都の吉村憲彦・福祉保健局長も同日、報道陣に対して「医療提供体制がすぐににっちもさっちもいかなくなって、死者がばたばた出ることは、現状ないと思っている。(報道が)いたずらに不安をあおることはしてほしくない」と述べている。
どちらの発言も、重症化のリスクが高い高齢者の感染者数が年末年始の第3波に比べ減少していることが念頭にあるとみられる。ただ、都内の保健所の職員は「陽性者が出れば全数対応をしなければならない。数が増えれば増えるだけ業務は逼迫(ひっぱく)する」と話す。複数の保健所で感染者への連絡や入院調整に時間がかかり始めているといい、「さばくのに手いっぱい」の状況になっているという。「(東京都などに)緊急事態宣言が出ているのに過去最多の感染者。先が見えない」という不安の声も聞かれた。
都内の保健所職員は五輪について「感染症とは相反するところがある。感染予防というところではなく、『みんなアクティブにやろう』というメッセージになっている」と批判。また、別の保健所の職員からは吉村局長の発言に対して「都の立場もあるのかもしれない。でも、若い世代でも重症化する人はいる。感染者数を減らすことを第一に考えなければならない」という意見が聞かれた。
日本医師会の釜萢(かまやち)敏常任理事は28日に厚生労働省であった専門家組織「アドバイザリーボード(AB)」の会合後、「危機感を国民と共有できていない。3000人を超える感染者が出ても『なんとかなる』と捉えられてしまうのではないかと非常に強い恐れを感じる」と述べた。
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長も29日の参院内閣委員会で、「最大の危機は、危機感が社会全体で共有されていないこと」と指摘。東京都の新たな感染者数が28日に3000人を超えたことに触れて、政府に対して「この時期を逃さないで、今まで以上に明確な強いメッセージを出していただきたい」と求めた。【神足俊輔】
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