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 ハム・ソーセージは欧州が発祥とされています。冷蔵施設がなかった頃、秋から冬にかけて農家が庭先でと畜した豚の肉を保存するために岩塩をまぶして漬けました。すると、岩塩に含まれる硝酸塩が、豚肉の独特の風味を引き出すとともに、肉を鮮やかに発色させたのです。いわば「肉の漬物」とでもいうべき保存食であり、日本の野菜の漬物と同様に、その味は家庭ごとに個性がありました。
 ハムの作り方をご紹介しましょう。まず、豚肉の脂肪を整形し、スジなどを取り除きます。次に食塩、香辛料、食品添加物などを混合した「塩せき剤」に漬け込んで冷蔵庫で熟成させます。熟成が完了したら肉の形を整えて糸で巻きます。これをスモークハウスに入れて乾燥、スモーク、蒸煮します。その後冷蔵庫で一晩冷却し、包装、計量、表示をして出荷します。生ハムなどはボイルしない代わりに、数週間~1年以上低温でゆっくり乾燥させて、保存性を高めます。
 保存食としてのハム作りは常に微生物との闘いです。肉を塩漬けにしたり、乾燥・スモークをして余分な水分を飛ばしたり、加熱したりと、全ての工程は微生物をやっつけるために工夫されています。
 本校では学生に食肉そのものだけではなく、調理やハム・ソーセージの作り方なども教えています。プロの講師と学生が手間と時間をかけて一緒に作ったハム・ソーセージの風味は格別で、学生が実家の精肉店に送ると、そのおいしさに驚かれることも珍しくありません。
 本校の講師が作ったベーコンは、年2回、玉村町の小中学校の給食でパスタやポトフなどに使われています。本校の実習室は学生に基本を教えるためのものなので大きな機械などはなく、全ての工程を伝統的な製法で行います。県産の冷蔵豚バラ肉に塩せき剤を手ですり込んで、冷蔵庫で2週間熟成させた後、乾燥・スモーク・加熱して作ります。この2週間という時間こそが、豚肉本来の独特の風味を引き出し、うま味を醸成させてくれるのです。その献立の日は講師が小中学校に出向き、ベーコンができるまでを説明します。おかげさまで、子どもたちからも好評をいただいています。
 子どもの頃に覚えた味覚は生涯忘れないと言われています。皆さんも懐かしい味や香りを嗅いだ時、幼い頃の原風景がよみがえってきたことはありませんか。「ベーコン本来の味」を知った子どもたちが、大人になって豊かな食生活を送ることを願っています。
 最近はスーパーでもさまざまな種類のハム・ソーセージが販売されています。「おうち時間」が増えた今、皆さんもいつもと違うハム・ソーセージを試してみてはいかがでしょうか。
全国食肉学校学校長 小原和仁 玉村町福島
2021/7/21掲載

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