北欧・フィンランドの魅力を紹介する、新連載が始まります。フィンランドといえば「ムーミン」の故郷。まずは「ムーミン」の作者トーベ・ヤンソンの愛した小さな島のお話から。見過ごしがちな自然の小さな変化に目を凝らすと、心を満たすヒントが見つかるかもしれません。
四季の美しい自然、アートやデザインを楽しむ暮らし。ライターの内山さつきさんが、フィンランドで日々を豊かにするヒントを見つけ、“幸せ”を感じたスポットや人々の営みを紹介します。
水も電気もない岩の島へボートで
クルーヴハルは、「ムーミン」シリーズを生み出したアーティスト、トーベ・ヤンソンが夏の間暮らした、フィンランド湾の群島のなかのひとつ。トーベは50歳のとき、パートナーのトゥーリッキ・ピエティラと、この岩礁の小さな島に自分たちの力で小屋を建て、以降20年以上の夏をそこで過ごした。
トーベ・ヤンソン生誕100年の2014年8月、私はジャーナリストとして、イラストレーターの友人とともにこの島に一週間滞在する機会に恵まれた。そしてその旅は、その後の私の旅と進む道をすっかり変えてしまったのだった。
クルーヴハルには、水も電気もなく、人の住む島もすぐ近くにはない。もちろん公共交通手段もないので、地域の船乗りのカイさんにボートを出してもらうことになっていた。私たちを島まで連れて行ってくれるのは、アルベルティーナという名前の美しいボートだ。
「アルベルティーナは、私の父親から取った名前で、この船は父が造ったんだよ。アルベルティーナのネームプレートは、トーベがデザインしてくれたんだ」
カイさんは誇らしげにそう紹介してくれた。アルベルティーナに乗り込んで、いざ、出発!
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