福岡市の老舗酒

福岡市の老舗酒蔵、230年の歴史に幕 蔵や道具は「地域の施設に」


 福岡市南区に酒蔵を構える老舗の綾杉(あやすぎ)酒造場が、7月末にも約230年の歴史に幕を下ろす。約60年前まで市中心部の天神地区で酒を醸しており、現在地に移転した後も博多の夏の伝統行事「博多祇園山笠」にちなんだ酒を販売して地元に親しまれてきたが、日本酒の消費減少などから廃業を決めた。
 1793(寛政5)年に天神地区で創業した県内屈指の老舗。銘柄の名称でもある綾杉は、創業者が現在の福岡市東区香椎の出身だったことから、付近の神社・香椎宮(かしいぐう)に今もある神木の名から取った。江戸時代は黒田藩に酒を納めていたという。
 9代目代表の中尾卯作さん(71)によると、天神地区で営んでいた頃は地下水を酒の仕込みに使っており、海に近いためミネラル感のある味わいだったという。周辺の区画整理事業がきっかけとなり、1958年に南東へ約4キロ離れた現在地に移転。その後、都市化が進んで酒造用水の確保が難しくなり、70年ごろに自社での醸造を断念した。以後は他社から酒を仕入れ、自社で瓶詰めやラベル貼りなどをして販売している。
綾杉酒造場の外観。廃業後の建物は活用方法を検討する=福岡市南区塩原1で2021年6月25日午前11時33分、植田憲尚撮影
 酒蔵としては小規模で、商品は天神地区の綾杉酒造場跡地の一角に設けた「酒のぎゃらりい・綾杉」や、福岡市内の商業施設などで販売してきた。だが、国内の日本酒消費量は減少傾向で、自社醸造をしていないと商品展開に限界があり、2年ほど前から廃業を検討していた。ここにきて「長く続けてきた酒蔵を終えるのは心苦しいが、今の状態で次の世代に引き継ぐのは難しい」と決断した。
 地元の愛飲家からは廃業を悲しむ声も。生粋の博多っ子という簑原俊樹さん(70)は「小学生の頃、綾杉酒造場には立ち飲みをできる場所があり、通る度に良い香りが漂ってきました」と懐かしむ。成人してからは、刺し身の味を生かしてくれる綾杉の酒を楽しんでいたといい、「博多の食文化を支える重要なもの。無くなるのが残念で寂しい」と惜しんだ。
 廃業はするが、現在の酒蔵の建物は取り壊さずに活用していく予定だ。中尾さんは「酒造りの道具も大事に残しているので、地域の人々に喜んでもらえるような施設にしたい。ゆっくり考えます」と話す。
 酒のぎゃらりい・綾杉(092・741・0025)は当面営業を続ける。【植田憲尚】
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