再逮捕容疑は6月20日夜ごろ、自宅で父博和さん(当時88歳)の首を長さ約1メートルの電気コードで絞め、窒息により殺害したとしている。県警によると、博和さんは車椅子で生活していた母満喜枝さん(同87歳)の世話をしていたが、事件の約1週間前に自転車で転倒して一時入院するなど脚が不自由になり、2人とも介助が必要になったという。
松本容疑者が2人の食事の世話などをするようになったが、6月20日に博和さんから「トイレに連れて行ってほしい」などと初めて排せつの世話を頼まれたことなどから介助が面倒になり、突発的に事件に及んだとみられる。松本容疑者は満喜枝さん殺害も認めており、県警は事件を目撃した母親も口封じのために殺したとみて調べている。
松本容疑者はその後、現金数十万円を金融機関から引き出し、同23日夕に自転車で外出。在来線などで山口や秋田、静岡など各県を転々とし、7月4日朝、京都市内のホテルから出てきたところを逮捕されていた。福岡地検は25日、両親の遺体を冷蔵庫に遺棄した死体遺棄容疑について処分保留とした。【浅野孝仁】
垣間見えた8050問題の悲劇
捜査関係者や近隣住民によると、松本容疑者は両親との3人暮らし。大学中退後、一時は職に就いたが短期間で辞めてからは自宅にこもりがちになり、両親の年金で家族の生計を立てるしかなかったという。
数年前に母満喜枝さんが脳梗塞(こうそく)を起こし、満喜枝さんの世話をしていた父博和さんも今年6月に自転車で転倒して一時入院し、松本容疑者が両親の面倒をみるようになった。一方で、満喜枝さんの介護のため自宅を訪れていたケアマネジャーや民生委員に両親は「こういう子だから気にしなくていいよ」などと言い、松本容疑者への支援は求めていなかったとみられる。
捜査関係者は「介護らしいことをしてこなかった容疑者が急きょその必要に迫られ、将来への不安やストレスを募らせたことが背景にあるのでは」とみる。
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