【「サイダーのように言葉が湧き上がる」トークイベントオフィシャルレポート】
「神谷さん、お父さん役だって気付きましたか? 多分、言われなかったら気づかないくらい馴染んでたと思うんですが。神谷さんと初めて仕事したのはテレビシリーズの「クジラの子らは砂上に歌う」という作品で、シュアンというキャラクターを演じていただいたのですが、印象深かったのはアフレコの最初の日に結構突っ込んだところまでキャラクターの質問をしてくれまして。そこまで聞いてくれる人ってあまりいないんですよ。あれほど人気な方でも、こういうふうに聞いてくる、理解しようとするんだという姿勢に感銘を受けたんです。
シュアンは、影がありつつ飄々としているようなキャラクターなんですけど、テストのパターンは生々しすぎてNGにしているので放送にはのってません。ただ、普段の神谷さんから完全にスイッチが切り替わってて。絵であるはずのキャラクターがその場にいるような芝居をされていて、かなり度肝を抜かれたんですよね。そのときに"もしかしたら地に足がついたキャラクターを神谷さんはやってみたいんじゃないかな"と勝手に想像したんです。
そういうところも踏まえて、今回チェリーのお父さん役をオファーさせていただきました。「サイコト」のアフレコ中はブースの中に入ってディレクションさせていただいていたんですが、喉を潰しちゃいまして。声優界では有名らしい、喉に優しいゼリーみたいなものを神谷さんがスッと差し出してくれたのが一番の思い出です」。
「坂本真綾さんは、実はお話作りのスタッフとして呼ぶつもりだったんですよ、役者じゃなくて。劇中ラストあたりに流れる大貫妙子さんの「YAMAZAKURA」がありますよね。副案として、実は真綾さんが歌うっていうのも考えていました。大貫さんに曲を作ってもらえるとも思っていなかったし、大貫さんが歌ってくれるとも思っていなかったので。
僕の中での満点回答としては、大貫さんが作詞作曲して歌ってくれることで、結果的にそれは実現したのでよかったんですが、曲は作れるけど歌うのは難しいかもと言われたときに、僕は真綾さんを出すつもりだったんですよ。実は大貫さんが真綾さんに曲を提供していたりする繋がりもあって、そして彼女は素晴らしいミュージシャン・シンガーでもありますので。
今となっては僕としてはベストではあるんですが、真綾さんが歌うバージョンも聴いてみたいので、どこかでカバーとかやってくれないかな(笑)。お芝居についてはもう100点満点なんで言うことなしでございます!」。
「梅原裕一郎くんにはタフボーイというキャラクターを演じてもらいました。梅原くんも神谷さんと同じく「クジラの子らは砂上に歌う」で初めてお仕事したんですが、彼はオーディションでオウニという役を獲得したんですけど……梅原くんの見た目知ってますか? みなさん。びっくりするくらいイケメンですよ。イケメンだしかっこいい声なんですよ。
ただ、休憩中とか話していて思ったのは、イケメン感が全然なくてフラットな感じなんですよね。神谷さんとは違うベクトルで、梅ちゃんのあの見た目とあの声で演じる役もイケメンが多いんですよ。僕は普段のフランクな感じの梅ちゃんを見ていて、見た目に引っ張られないような面白い役をお願いしたら良くなるんじゃないかなと思いつつ、同時にタフボーイイケメン化計画が僕の中でありまして。見た目もちょっとヤンキーっぽいので愛されキャラになってほしいなと思ったんですよ。
だから声を梅ちゃん的イケメンボイスにして、しかも普段あんなコミカルだったり怒ったりイキったりする芝居をしない人にやってもらったら愛嬌が出ていいのかなと思って演じてもらいました。最後の方で笑いながら「どっちだよ」というセリフがあるんですけど、すごく拘りながらディレクションをしまして。自分で「こんな感じだよ」とやりながら3、4回撮り直してもらったんですけど、最後まで付き合ってくれました(笑)」。
「潘めぐみさんは今回初めて一緒にお仕事をしたんですが、今までの作品で何度かオーディションには参加していただいていたんです。スナックワールドのチャップっていう少年を潘さんが演じていることを知らずにテレビで見ていて。少年ボイスなんですけど非常に可愛げがあって愛嬌があるいいお芝居してるなと思って、最後にテロップ確認したら潘さんって書いてあって。
「この世界の片隅に」では遊女の役、「俺物語!!」ではヒロインの可愛い女の子と、カメレオン女優ですよね。それを知った上であの少年ボイスを聞いてたので、自分の作品で少年が出てきて、悪ガキなんだけど愛嬌を植え付けられるキャラがあったらお願いしたいと思っていて、今回ビーバーくんをやっていただきました。非常によかったです。
元気もいいし、たまに可愛げがあるような芝居をしてくれて、非常に嬉しかったです。最初のドタバタ劇の中で「元プリィ!?」っていうんですが、アフレコ中に笑そうになってしまって。危うく僕の笑い声が入ってNGになりそうになったくらいツボでした。あそこはすごく好きです」。
Twitterで寄せられた質問に対しては「(一番こだわったシーンは?)最後の俳句ラップのシーンです。あそこがやりたいからこそ、この映画を作ったとも言えるので。さらにいうとそのシーン、自分で演じて撮影してるんです。デモテープを1回自分で作って大貫さんのデモに重ねて自分でラップして、それを染五郎くんに聞いてもらって、演じてもらってるんです。それくらいの苦労を重ねて作ったシーンですので、あそこが一番こだわったシーンですね。ただねぇ……自分で見返すとキツイです、自分なんで(笑)」。
「(背景の色が特徴的で色が濃いと感じたが、その狙いは?)"色が濃い"の答えにはならないかもしれないですが、この作品をハッピーエンドで終わらせるつもりでした。そこから逆算していくとビジュアルも音楽もポジティブな印象を与えるということが重要なんですよ。あと自分の趣味も兼ねてですけど 80年代のシティポップアート調にしたりもあるんですけど、"ポップにした"という狙いはあります。
色の勉強をされている方がいらしたら、パッケージが発売されたり配信が始まったらRGB値を取ってもらいたいですね。実は日本の色で構成しているので、彩度が高いわけじゃないんですよ。彩度高く明るく跳ねて見えるのは、差し色がそうさせてる。空の色とか、結構彩度は低いんですよ。組み合わせで明るく見えるという。この辺は面白いところがあります」。
「(英訳を含め、海外を意識した?)僕は英語を喋れず全くノータッチなので、英訳については翻訳家の方ががんばってくださいました。この映画は最終的に海外で配給することも決まってましたので、意識はしたんですが作りに関しては完全にドメスティックです。日本の文化に根ざしたものを作れば海外に響くという実感が今までの経験の中であったんですよ。変に各国でのローカライズみたいなものを意識せず完全に日本の文化に根ざして作りました。これが僕の中で正解だと思っています」。
また、観客から質問を募ってのQ&Aも行われた。
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