「『日本酒を体系的に学ぶのであれば新潟大学』と世界的に認知されるよう、教育研究、情報発信、国際交流をテーマに活動を展開していく」。2日に行われた日本酒学センター開所式で、センター長の鈴木一史教授(応用微生物学)は出席者を前に展望を語った。式典には県酒造組合や県産業労働部などの関係者が出席した。
センターは産学地域連携棟内に4月完成した。各教員の研究室をはじめ、新潟税務署の許可を受けて日本酒の試験醸造場を完備。さらに日本酒と食品の成分解析室、利き酒実習室なども設けた。
この日は関係者や報道陣に内部が公開された。試験醸造室では、乾燥させた米とこうじ、水を混ぜ合わせ、酵母を加えて10度ほどで約20日間発酵させたもろみを貯蔵。もろみを絞り酒と酒かすに分ける「上槽」直前のものからは日本酒の香りが漂っていた。新たな酵母を育てる「育種」も行われており、酵母の種類や培養の温度など細かく変化を加え、味や香りの違う酒を何通りも試すことができるという。
同大の日本酒学は10学部すべてが関わり、醸造学や発酵学だけでなく、流通や歴史、酒の心身への影響など研究内容は多岐にわたる。牛木辰男学長は「酵母、こうじの研究を通じ、単なるアルコール製品としての学問だけでなく、日本酒の文化から海外への展開も含めた経済分野まで研究対象は幅広い。日本酒を契機にしてさまざまな分野へのアプローチを学ぶのが狙いだ」と話す。
全学生対象の一般教養科目として、日本酒の歴史を学ぶ「日本酒学A」▽県試験醸造場の指導の下、利き酒などの実習を行う「日本酒学B」▽専任教員の専門内容を学ぶ「日本酒学C」――などを整備したところ、応募が殺到。特に「A」は定員の2倍超となる1000人が希望する人気講座となっている。
ワインを手本に食との相性模索
特徴的なのは、ワインの銘柄とそれに合う料理との組み合わせに関する研究。フランス語で「マリアージュ(結婚)」とも表現され、酒と料理が香りや味を高め合う相乗効果を指す。センター拠点施設に「おいしさ解析室」を整備し、酒と食品の成分分析なども研究に活用。和食だけにとどまらない食材と日本酒とのマリアージュを模索している。
同大は2019年1月に世界有数のワイン産地として知られるフランス・ボルドー地方のボルドー大と交流協定を締結しており、世界的なワイン研究ネットワークにも参加。海外での学生交流や研究会開催も視野に、日本酒の世界的な普及を目指すとしている。
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