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ほんの数カ月前までブルーオリジンは、2021年7月20日(米国時間)に歴史的偉業を成し遂げると考えてはいなかったことだろう。だが、ジェフ・ベゾスが自己資金で設立した宇宙開発企業であるブルーオリジンは、確かに歴史をつくった。
つまり、メアリー・ウォレス(ウォリー)・ファンクが宇宙に飛び立った日なのだ。
もちろん、ブルーオリジンとアマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスもカプセルに同乗していた。ほかにも宇宙旅行のチケットを購入した最初の顧客である18歳のオリヴァー・ダーメン、そしてジェフが「宇宙で最も面白い男」と呼んだジェフの弟である。
ただし、弟に対するジェフのこの賛辞については、ロケット打ち上げのためにテキサス州西部に集まった経験豊富な宇宙業界記者たちは、口を揃えて異議を唱えている。記者たちによると、元宇宙飛行士のマイク・マッシミーノとギャレット・リーズマンがホストを務めるポッドキャスト「2 Funny Astronauts」のほうが面白いのだという。
誰よりも意欲に満ちていた82歳
世界一の富豪を宇宙に送り出すというのは驚くべき策であるし、商業宇宙旅行の幕開けは画期的な出来事である。だが、ウォリー・ファンクの参加それ自体が独特の意味をもつ。
多くのメディアで幾度も語られてきたように、ファンクは1960年に「マーキュリー13」のオリジナルメンバーとして、最初の女性宇宙飛行士となるべく訓練を受けていた。ところが、米航空宇宙局(NASA)がプログラムを打ち切ったのである。
このため、熟練パイロットで熱心な航空安全調査官だったファンクは、かなわなかった宇宙飛行の夢に、その後の60年ずっと執着してきた。2010年には、20万ドル(約2,200万円)を支払ってリチャード・ブランソンの「VSS Unity」の座席を確保し、10年以内にヴァージン・ギャラクティックの弾道飛行に参加できることを期待していた。
しかし、順番がなかなか回ってこなかったことで、ファンクはいら立ちを募らせていた。そんなとき突然、ベゾスが今回の「ニュー・シェパード」の座席を提供したのである。
このほど世界が知ることになったように、ファンクはこの宇宙飛行にやる気満々だった。80歳を超えるファンクは搭乗者のなかで最も意欲に燃え、準備万端だったと同乗者が繰り返し証言している。
そしてファンクの興奮は、映像を見ていたすべての人の目にも明らかだった。カプセル内でシートベルトを締めて打ち上げを待っている間など、多少の不安を抱くことが許されるときでさえ、ファンクは宇宙空間と大気圏の境界とされる「カーマン・ライン」を超える瞬間をワクワクしながら待ち望んでいた。「エネルギーが満ち溢れるように感じました」と、のちにファンクは振り返っている。
「6分間の遅延があったのですが、ファンクは『いったい何に手間どっているのか』といった表情でしたよ」と、ベゾスは言う。「『何をぐずぐずしているの。早く行きましょう』と、待ちきれない感じでしたね」
案の定、ニュー・シェパードが宇宙へと飛び立って65マイル(約104km)上空に到達すると、ファンクは座席から離れてクレイジーな体勢をとってみせた。「これは楽しいわ! 最高よ!」と叫びながら、ファンクは同乗者と共にダンスカンパニー「ピロボラス」のダンサーが体を絡み合わせるパフォーマンスのような動きをして、はしゃぎ回ったのである。
着陸後の記者会見では、ファンクは壇上に上がったときから、詰めかけた人々の注目を独り占めしていた。記者会見が開かれた場所はブルーオリジンの基地にある「バーン(納屋)」と呼ばれる施設で、ロケットの格納に十分な広さがあることを考慮すると大したものである。
会見後も、ほかのクルーメンバーのようにすぐ着席するのではなく、ステージの端に行って両手を広げ、サッカー選手のミーガン・ラピノーばりの大胆な勝利のジェスチャーをした。話す際は必ず立ち上がり、顔にマイクを近づけながら話したので、コメントが明瞭に伝わった。記者やクルーの友人、家族、そしてアラン・シェパードのふたりの娘など、記者会見に詰めかけた人々の目はファンクに釘付けだった。
JOE RAEDLE/GETTY IMAGES
スポットライトを譲ったベゾス
ジェフ・ベゾスは賢くも、その流れに喜んで便乗した。大部分の人は、中心になるのがベゾスであるべきだと思っただろう。だが、ベゾスは喜んでファンクにスポットライトを譲ったのである。
一部のブルーオリジン関係者は、どこまでも率直で、面白いほど予測のつかないファンクが何を言い出すかわからず、ピリピリしていたことも確かである。しかし、心配は無用だった。ファンクはベゾスにとって、「Alexa」以来となる最高のプロモーターの役割を果たしたのだ。
「宇宙に行くことを長い間、心待ちにしていました。長年の夢をかなえてくれたあなたに大変感謝しています」と、ベゾスをハグしながら語ったファンクの言葉に、聴衆から改めて温かい拍手が沸き起こった。そしてベゾスは決して認めないだろうが、ファンクを宇宙飛行に招待したことは、リチャード・ブランソンに一矢報いる最高の方法にもなった。ブランソンは最初に宇宙飛行を体験したかもしれないが、ベゾスにはウォリー・ファンクが同乗したのだ。
ベゾス自身も認めるように、彼は宇宙飛行がどのくらい素晴らしいものだったか表現することに苦労していた。ファンクの存在は、こうしたベゾスの表現のいたらなさを埋め合わせてくれた点で、特に喜ばしいものだっただろう。
帰還後の最初のテレビ取材で(紙メディアである書籍の販売から始まった企業の創業者であるにもかかわらず、ベゾスは活字のメディアを好まないようだ)、ブルームバーグテレビジョンのエミリー・チャンが、宇宙はどのようなものだったかとベゾスに尋ねている。ベゾスは、自分にはそれを正しく言い表すための表現力が欠けていると語っていた。「詩人を宇宙に送る必要があるかもしれません」と、ベゾスは提案した。「誰か宇宙の素晴らしさを、もっと正確に表現できる人物をね」
このときファンクがみせた興奮は、宇宙の素晴らしさを力強く物語っていた。ファンクのただひとつの不満は、もっと長く宇宙にいたかったということである。「もう一度、できるだけ早く宇宙に行きたいと思います」
さらなる感動を提供するために
ファンクの素晴らしいパフォーマンスがベゾスの最高の1日を締めくくった。ベゾスが所有する企業は、ついに長年の目標だった有人飛行を達成した。ベゾス自身も最高の友人や弟と共に長年の夢である宇宙旅行を実現した。しかも、生きて地球に戻ってきたのだ。
そしてベゾスは、全世界の宇宙愛好家に注目されているこの機会に、新たな慈善活動も発表している。礼節をもって問題を解決に導く市民団体の指導者に、1億ドル(約110億円)を寄付するというのだ。選ばれたヴァン・ジョーンズとホセ・アンドレスは、自分たちの支持する社会運動に自由に資金を分配できる。
ただひとつ手間どったように見えたのは、NASAの元スペースシャトルパイロットで現在ブルーオリジンで働くジェフ・アシュビーが、帰還者にサファイアで縁取られた翼を授与しようとしたときだろう。この翼は、新しく宇宙飛行士の資格を得たことを意味する。ジャンプスーツにうまくメダルを留めることができず、数秒ほど気まずい時間が流れたあと、ミッションは完了した。
JOE RAEDLE/GETTY IMAGES
ブルーオリジンは今年、あと2回の宇宙飛行を実現することを約束している。ベゾスはまた、より多くの商用宇宙飛行を提供できるように増産を検討していると語っている。とはいえ、次の飛行にはベゾスもウォリー・ファンクも搭乗しない。それでは、どうすれば今日の飛行を上回る感動を提供できるのだろうか。
詩人のアマンダ・ゴーマンを招待してはどうだろうか。バイデンの大統領就任式でスターになったゴーマンを宇宙に送れば、記憶に残る乗客となるばかりか、弾道飛行の宇宙の素晴らしさを詩人に表現してもらう必要性についても解決できるだろう。
※『WIRED』による宇宙旅行の関連記事はこちら。
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