ゴルフ男子には最新の世界ランキング（7月25日付）で20位の松山英樹ら50位以内のトッププロ18人がそろう。4月のマスターズで日本男子初のメジャー大会制覇を果たした松山の最大のライバルと目されていた全米オープン覇者のジョン・ラーム（スペイン）と飛ばし屋のブライソン・デシャンボー（米国）がいずれも新型コロナウイルス感染で欠場し、メダル争いは世界ランクの上位陣に絞られた感がある。
中でもメダル獲得に並々ならぬ意欲を示しているのが韓国勢だ。韓国代表の任と金はともに高校時代にプロ転向し、現在は米ツアーで活躍する若手の筆頭格。任は17歳で日本ツアーの予選会を通過し、2年間プレー。2018年から米ツアーに挑戦し、昨年初勝利を挙げた。20年のマスターズで2位に入るなど世界ランク27位の注目株だ。一方の金も17歳で米ツアー予選会を突破し、16年に米ツアー初優勝。これまで3勝を挙げ、韓国ゴルフ界を引っ張ってきた。
ゴルフ男子第1ラウンドでプレーする韓国の金施佑＝2021年7月29日、ロイター
五輪でメダリストになれば2年間の兵役が免除される。韓国代表の2人にとっては国の威信を懸けて戦う以上に、より価値のある舞台。韓国では社会的に「国民の義務」である兵役経験が重要視されるだけに、公式に免罪符が与えられる五輪のメダル獲得は、アスリートとして最も脂の乗った20代の2年間を失うことを考えれば、何としても実現したい目標であるに違いない。
韓国選手で兵役の影響を受けたのが、11年に日本ツアーで3勝し賞金王にもなった裵相文（ベ・サンムン）だ。米ツアーで2勝を挙げるなど絶頂期を迎えていた15年に入隊期限を迎え、実績を理由に兵役免除を訴えたものの認められず、2年間の兵役に就いた。除隊後の17年秋から米ツアーに復帰したが勢いは失われ、今では世界ランク958位と低迷する。
一方で06年ドーハ・アジア大会で金メダルを獲得し、兵役を免れた金庚泰（キム・キョンテ）は、その後日本ツアーで14勝を挙げるなど免除の恩恵を大きく受けた。「兵役に行かない代わりにゴルフで好成績を残すことが、国にできる恩返しだった」と振り返る。
1世紀超のブランクを経て五輪に復活したゴルフだが、伝統あるメジャー大会や高額賞金のツアーが優先され、世界ランク上位者の欠場が目立つなど高い地位を築いているとは言いがたい。にもかかわらず、韓国代表の2人は早々にメジャー・全英オープンへの出場を辞退し、五輪に向けた準備に費やしてきた。2人は、日本初のメダルを目指す松山の強力なライバルになるだろう。【和田崇】
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