仕送りで建つ豪

仕送りで建つ豪邸、ベトナム「億万長者の町」 借金とリスク、それでも出稼ぎを夢見る:朝日新聞GLOBE+


欧州に出稼ぎに行ったことのある人を探し歩いていると、グエン・スアン・フオンさん(38)という男性に出会った。親類が10年前からドイツに出稼ぎに行っており、ここ数年は欧州や日本、韓国、アフリカ南西部のアンゴラに行く知り合いが目立つという。
「日本と韓国は合法的な制度であらかじめ働く会社が決まっているから安心だ。収入も比較的高い。欧州とアンゴラは稼げるけど、大半が不法入国で仕事は選べないリスクがある。コロナが収まれば、私は韓国に行くつもりだ」
行き先ごとによどみなく収入とリスクをてんびんにかける説明に驚いた。どこに行くかを選ぶ上で、合法的な制度かどうかはあまり重要ではないようだった。チャー・ミーさんたち39人が命を落とした英国の事件に何か思うところはないのか。
彼はこう答えた。「事件直後は怖がっている人も多かったけど、時間が経つにつれて印象が薄れている。コロナが収まれば、欧州に行く人は以前と変わらないと思う」
地域は異なるが、国連開発計画(UNDP)が18年に欧州に渡ったアフリカからの不法移民3000人を対象に実施した調査がある。そこでは、9割が渡航のさなかに危険な目に遭ったと答えた。しかし、あらかじめ道のりがどれほど危険かを知っていれば渡航をやめたと答えたのは2%だった。
ベトナムの経済発展と海外労働者派遣
だが、農業が中心の中部は発展が遅れ、政府は失業対策や経済対策の面から海外への出稼ぎを奨励してきた。16年の統計によると、ハティン省とドータインがあるゲアン省からの海外出稼ぎ労働者は合計約2万7000人。63ある省と市のうち、この2省で海外派遣労働者全体の5分の1を超える。英国の事件では、亡くなった39人のうち31人が両省の出身だった。
日本は昨年まで3年連続最多の派遣先で、コロナ前の19年には全体の半数を超える約8万人が日本向けの労働者だった。欧州への不法入国者は、17年の国連の推計によると年間1万8000人。2番目の労働者派遣先の台湾に次いで多い。
世界銀行によると、20年に海外のベトナム人が自国に送金した金額は約170億米ドル(約1兆8500億円)でGDPの5%を占める。東アジア太平洋地域では中国とフィリピンに次いで3番目に多い額だった。
ベトナムでは今、ハノイとホーチミンを中心に北部と南部が急速に発展する一方、中部は目立った産業がなく取り残されている。コネがなければ、都会に出ても良い仕事に就くのは難しい。自分には変えようがない厳しい現実のせいで、今いる場所に未来を見いだせなければ、外国に働きに行くことが人生を変えるための有力な選択肢になる。
道を尋ねるために、ドータインの路上でココナツを売っていた女性に声を掛けた。ゴー・ティ・チュン(38)と名乗った彼女が突然、思いもかけない言葉を口にした。「私はこの町で一番貧しい人間です」
ドータインの路上で果物を売って暮らしているチュンさん(中央)と長女のニャンさん(左)、次女のタオさん=2021年4月、ベトナム・ゲアン省ドータイン、宋光祐撮影
夫は薬物の使用で3年前から服役しており、子ども3人を一人で育てている。毎朝午前3時に起きて果物の仕入れに出かける。路上販売を終えてからは収入の足しにするため、知り合いの畑で農作業を手伝う。仕事や家事を終えて眠るころには午後11時を過ぎる。その表情は、過酷な毎日に疲れ切っているようだった。
「周りで良い暮らしをしているのは、英国やドイツ、カナダに働きに出た家族がお金を送ってきてくれる人たち。私は子どもを外国に出稼ぎに行かせるお金さえ用意できない」
話している最中に長女のニャンさんが学校から帰ってきた。私を見つめる彼女に思わず、「将来の夢は何ですか?」と聞いた。
日本に行くという彼女たちの夢が実現するのを願った方がいいのか、私には正直分からなかった。

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