7月18日の対フランス戦で守備をする張本天傑選手（右奥）＝埼玉・サイデン化学アリーナで2021年7月18日（代表撮影）
東京オリンピックは26日、45年ぶりに出場するバスケットボール男子の日本代表が初戦に臨む。「史上最高」と言われるチームの一角を担うのが、子どものころに中国から来日し、日本国籍を取得した張本天傑選手（29）＝名古屋ダイヤモンドドルフィンズ＝だ。この日は、母校の私立中部大第一高校（愛知県日進市）の全国高校総合体育大会（インターハイ）の初戦。同じ空の下、共にボールを追うことになった後輩たちは「天傑さんが頑張っている分、自分たちも優勝を報告したい」と、日本一を目指す。
張本選手は愛知県みよし市（旧三好町）の中学を卒業後、同校に入学した。親しみやすい性格で、チームメートとすぐに打ち解ける一方、妥協せず練習も自ら進んで本当にコツコツやってきたという。
「日本人として生きていきたい」。張本選手から常田健監督（51）に相談があり、その後日本国籍を取得したのは在学中のことだった。さまざまな葛藤を乗り越え、出したに違いない結論だった。日本国籍取得後、3年時の2009年には同校初のウインターカップ出場に貢献した。卒業後も母校の練習に参加したり、留学生にウエアを差し入れたりしてきた。
7月中旬、中部大第一の体育館。インターハイを間近に控えた54人のバスケ部員が、全身から汗を噴き出しながら練習に励んでいた。部員の9割が県外出身で、マリやナイジェリアなど海外から身長200センチ超の留学生もいる。
「シュートやパス、プレーの一つ一つの質が全然違い、刺激をもらった」。キャプテンの黒川才徳さん（18）は、2年前に張本選手が同校を訪れた際に間近で見たプレーを、今も鮮明に覚えている。将来の夢はプロ選手という福田健人さん（17）は「同じ体育館で練習して、やり方次第では自分たちも五輪に出場できるということを示してくれた」と喜ぶ。
日本代表12人には、米プロバスケットボールNBAで活躍する八村塁選手（23）や渡辺雄太選手（26）らが名を連ね、史上最高のチームとも言われている。常田監督は「天傑は中高から有名なスーパースターではなかったし、エリート街道を突き進んできたわけではない。だからこそ、すごい。（日本代表は）難しいと思っていたから、選ばれた時は本当にうれしかった」と手放しの喜びようだ。
代表入りが決まった7月5日、常田監督が「これまでの苦労が報われて本当にうれしいです」と祝福のメッセージをLINEで送ると、張本選手からは「全力で暴れてきます！ オリンピック終わったらお邪魔します！」と力強い言葉が返ってきた。
7月にあった強豪・仏チームとの強化試合では、NBAで最優秀守備選手に輝いた身長216センチのゴベール選手をマーク。試合終盤の大事な場面で仕事をさせなかった。常田監督は「指導者に求められることを遂行していく力がある。コートの中で1分1秒でもチャンスがあるのなら、全力で天傑らしいバスケをやってほしい」と活躍を願う。
同校は、6月の東海大会で優勝、インターハイへの出場は14回目。コロナ禍で公式戦が中止となり、練習が思うようにできない時期が続いたが、狙うのは日本一。憧れの存在である張本選手の背中を追い、心は日本代表と共に、全力を出し切る構えだ。【酒井志帆】
張本選手のユニホームを囲みエールを送る中部大第一高校バスケ部の後輩部員たち＝愛知県日進市の同校体育館で2021年7月16日午後2時33分、酒井志帆撮影
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